きみのためのプレゼント
「・・・さっきは、あんなふうに言ってすまなかった。君の話を聞きたい。また、時間を作ってくれないか?」


「はい。いつでも構いません」


「沙織のことよろしくお願いします」


お父さんはそう一言だけ告げ、もう時間だからと仕事に出かけて行き、お母さんはその後を見送るために追いかける。

そろそろ、充が起きてくる時間のはずだけれど、まだ寝ているのだろうか。今、私は藤本くんと二人っきりでリビングに残されている。


しかも、さっき、気がついたけれど私はまだ、パジャマのまま。よりにもよって可愛らしいルームウエアとはかけ離れたグレーのロゴ入りTシャツと黒いハーフパンツ姿。


さすがにこの姿はあまり見せたくない。


とはいえ、すぐに部屋に戻って着替えることも出来ないし、藤本くんを部屋に入れたくないので仕方なく、このまま見送りに行ったお母さんを待つことに決めた。

とりあえず、立ちっぱなしもなんだからと藤本くんを隣に促して。


「藤野さん、ごめんね。お父さんにあんな風に言って。でも、君の家族よりも俺の方が藤野さんの足のことはずっと分かってるから。まだ副作用は大丈夫?足の痛みはどうかな?」


痛みは少しマシにはなってきたかもしれない。今のところそれらしい副作用も出てきてはいない。こんなこともあるんだ。


彼には出る副作用が私にはないことも。


「足の痛みは落ち着いてきたかも。しびれは変わらないけど激痛はなんとか。それよりこんな朝早くから迎えに来てくれたんだね」


「きっと朝練のこと、考えてるだろうなと思って。ちょっと迷惑かもしれないとは思ったんだけど。でも来て良かった。ごめんね。もっといろいろ話しておかなきゃいけないことがあったのに、何も話してなかったから」


お互いのことを、何も知らないまま入れ替わった私たち。そういえば、連絡先すら交換していない。でもちゃんと彼は気にかけてくれていたんだ。
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