きみのためのプレゼント
クリッとした愛らしい二重まぶたに女の子でも憧れる小顔。爽やかで、私は好きじゃないけれどヘラヘラ笑顔が特徴的。

でも、目の前の藤本くんは、ヘラヘラ笑顔に変わりはないけれど、どこか目の奥に私に対しての敵意を感じさせられる。


掴まれた腕は力強く、痛みまで感じる。彼は今、私に怒っている。あの言葉にとても激しく憎悪を抱いているに違いない。


「入れ替わりってよく聞くよね?階段から落ちて気がつくと、一緒に落ちた人間と入れ替わってたって。だったらさ、俺たちもやってみない?藤野さん、もう走りたくないんだし」


「い、入れ替わり?!そんなのドラマとかの話でしょう。そんなのあり得ないよ」


「そんなのやってみないとわからない。それにもし、俺と入れ替われることが出来たらもう、藤野さんが悩んでる伸び悩みのことだって、気にしなくていいんだよ」


そうか。走れなくなればもう、今のこの苦しみからは解放されるんだ。


縮まらないタイムに伸び悩んで、辛い苦しい気持ちもなくなる。


この負の連鎖から解放される。
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