きみのためのプレゼント
「・・・入れ替われるのかな。ここから一緒に落ちたら」


「・・・やってみる気になった?」


「・・・まあ、興味は出てきたかな」


「じゃあ、決まり。でも、このまま落ちてもうまくいくとは思えない。だからさ、この際、イベントに乗っかろうよ」


「イベント?」


「七夕だよ。七夕。もうすぐ七夕だからその日に俺たちもお互いの願いを込めてここから落ちようよ。可能性は低いけれど、七夕なら奇跡だって起きるかもしれないからさ」


七夕か。そんなこと、ここ最近、まったく意識しなかったから忘れていた。でも、今日は疲れていたのだろうか。


藤本くんのいうことが、七夕なら、願いが叶うかもしれないという安直な頭になってしまっている。


藤本くんのその言葉に、私はゆっくりと頷いた。確かに走りたくない。


もう、タイムと戦うことに疲れてしまった。


でも、そこまでしてでも頑張れるのは、支えてくれた人の言葉があるから。



その人が、「がんばれ」って言ってくれたら私は頑張れる。入れ替わりなんてしなくても立ち上がれるはず。


でも、私は七夕の夜、ここに来ることになる。すべてを捨ててもいいと思えるほど、傷ついた気持ちを抱えて。
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