きみのためのプレゼント
まだ時間が早いからとやってきたのは、ショッピングモール。少し、甘いものでも食べようと選んだのは果物をたくさん使った作りたてジェラートのお店。


たくさんあるメニューの中から私が選んだのはイチゴのジェラート。二人で並んでいるのも大変だからと私は場所取りとして席で待っていてほしいと言われた。


車椅子でフードコートにいると、やっぱり少しだけ自分が違って見える。別に悪いことをしているわけではないのに、居心地が悪い。


ベビーカーと一緒だと思えば少しは、この居心地の悪さはマシになるのだろうか。



「藤野さん、お待たせ」



なんとなく、他人に見られているのではないかという思いから、彼が戻ってくるまで俯いていたけれど、彼の声に顔を上げるとその手に持った二つのジェラートに目を奪われた。



「美味しそう。あっ、ごめん。いくらだった?」


「藤野さんの選んだジェラート、一番人気だったよ。ちなみに俺はチョコレート。これと迷ってたよね?食べていいよ」


「ありがとう。でも、ちゃんとお金は・・・」


払うからと言いかけた、言葉を言えなかった。スプーンで掬ったチョコレートのジェラートを藤本くんが口に入れたからだ。


美味しい。少しだけビターだけれど、冷たくてほろ苦くて美味しい。


「かっこつけさせてよ。誰かとデートするなんて初めてなんだから。それに、こうやって足のことも気にせずに、花火を見られるのも初めてだから子どもみたいに楽しみで、ワクワクしてる」


そう言う藤本くんは本当に少年のような目で、そのスプーンでまた、チョコレートジェラートを食べた。今の間接キスなのに、恥ずかしいとかないの?それとも気づいていない?


気づいてしまった私は、恥ずかしくてそれを見せないように自分のジェラートを掬って口に入れた。
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