きみのためのプレゼント
陰口は仕方ないとしても、聞こえるように言われるとやっぱり傷つく。彼はずっとこんな風に冷たい言葉に傷ついてきたのだ。

車椅子に乗っているというだけで。


「藤本くん、やっぱり・・・」


「藤野さん、俺たち悪いことしてないから。車椅子で、花火大会に来てはいけませんなんて決まりないし、堂々としてて」


「でも・・・」


「心配しなくても、あんな人たちと一緒に観覧しないし、誰にも迷惑かけない。今だけ少し我慢して」


堂々と。そっか。私が引け目を感じたら藤本くんを否定することになってしまう。私が堂々とすることで藤本くんにも自信を与えてあげられるのかもしれない。


周囲の眼差しは、観覧場所に行くまで冷ややかなものだったけれど、『悪いことをしていない』という思いで俯くのはやめた。確かに、車椅子は場所も取るし、花火大会には適していないとは思う。


でも、車椅子の人たちが花火大会を見に来てはいけないという決まりもない。ただ、そこに大事なのは、「すみません」という言葉。


それがあればまだ相手にも譲り合いの心が芽生えてくれるはず。



「さあ、着いたよ。ここなら邪魔されることなく、人の目も気にならない。ゆっくりと花火を見られる」



藤本くんが、車椅子をピタリと止めた。特等席だと言っていたけれど、本当にこれ以上ない特等席だ。私の目の前で真っ赤なゴンドラがクルクルと回っている。
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