きみのためのプレゼント
そう、彼が連れてきてくれた特等席は観覧車。ここの花火大会は、観覧車の中から花火を見られるというイベントが毎年、開催されている。


でも、かなり倍率が高く、当然当日券なんてない。彼は、最初から花火大会に来るつもりだったってこと?


「障害の人のための特別席もあるんだけど、せっかくデートなんだし、特等席がいいなって思ったんだ」


「それって、最初から花火大会に来るつもりだったってこと?わ、私と」


返事がない。チラッと後ろを振り向くと、今まで見たこともないくらい真っ赤な顔をした藤本くん。なんだか私まで釣られて赤くなるし、頬も熱くなってきたので、慌てて向き直した。


なんだろう。さっきはモヤモヤしていたのに、今はちょっぴり嬉しい。


観覧車に乗れるのは、直前だということで、私たちはまた時間を潰すためにあまり、観覧車からは離れることなく、近くのベンチで少し時間を潰すことにした。


ベンチからは海が見えて、客船が行き来している。そっとベンチに座る藤本くん。私は車椅子のまま。


でも、なんだかこの距離がもどかしい。どうしたんだろう、私。これじゃまるで、藤本くんのことを、好きみたいじゃないか。


「車椅子から降りる?せっかくだし隣、座ろうか」


藤本くんもこの距離がもどかしいと思ってくれたと勝手に思ってもいいだろうか?


小さく頷いた私をお姫様だっこで降ろしてくれる彼。そんな私たちを見て小さな女の子が、言った。



「お姫様と王子様みたい」
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