Short
のぼるが転校する前日。
わたしたちは学校のジャングルジムに登っていた。
「明日で最後だねー」
「うん」
「のぼる、新しい学校でも元気にしてね」
「ありがとう。麻里もね」
弾まない会話。楽しげに話してるつもりなのに、言葉と心が追いついていない。
明日、明日でのぼるはいなくなってしまう。
「ねえ麻里」
「んー?」
しばらく沈黙が続いたあと、のぼるは口を開いた。
「僕のこと、忘れないでね」
「………」
「僕も、麻里のこと忘れない。麻里と過ごした思い出は大事にする」
そう言ってのぼるは笑った。
わたしはその笑顔を見て泣きそうになったけど、のぼるが笑ってるならわたしも笑うしか無い。
「あたりまえじゃん!」
のぼる。大好きなのぼる。
のぼるはわたしのことどう思ってたかな?
聞きたい。でも聞く勇気なんてない。