Short
「俺ね、ここに転向したのたまたまだったんだけど、名簿見て麻里の名前見つけた時ほんとにびっくりしたよ」
「あはは、そうだろうね」
「教室入ったら本物がいたし。心臓飛び出るかと思ったけど、俺の名前と姿見て反応しないあたりやっぱり忘れてるんだろうなって」
「それは、ごめん…」
「いやいや!そうじゃなくて!俺、すごい久しぶりに麻里に会ったし忘れられてるのも分かってたんだけど、それでも嬉しくて、懐かしくて、やっぱり大切な人だって思って」
まっすぐわたしを見つめるのぼる。
「忘れられててもいい。もう一度麻里と過ごせるなら何でもいいと思ってた」
のぼるの言葉ひとつひとつがわたしの涙腺を緩める。
「だから、さっき、嬉しかった。俺と同じ気持ちでいてくれたこと」
「さっきの、よく聞こえたね」
「あたりまえ。麻里の声なら逃さない。もうどこにも行かないし、手も離さない」
そう言って一歩わたしよ前へより近づくのぼる。そしてわたしの手を再びつかむ。