Short



吉澤くんが転向してきて1ヶ月。季節は秋。
今日は体育祭でクラス毎に気合が入る。


「優勝するっしょ!」

「リレー1位とりたいね!」


団結するクラス。わたしのクラスは割と仲良しなのでイベント事はいつも楽しい。


「麻里はリレーアンカーの前だよね?」

「そう。吉澤くんに渡すの。」


クラス対抗リレー。わたしはアンカーの吉澤くんにバトンを渡す。


「桜井さん」

サキと話していると吉澤くんがやってきた。


「バトンの受け渡し頑張ろうね」

「うん。練習通りね!」


細身の割に足が速かった吉澤くん。
アンカーにバトンを託すのは少し緊張するが、吉澤くんの一言で気持ちが軽くなる。


「位置について…よーい…」


パン!
ピストルの音とともにリレーが始まる。

出だしは2位次は3位…
順位が何度も変わりわたしがバトンを受け取る頃には3位だった。


「麻里がんばれーー!」

受け渡されるバトン。全力で走り1人抜く。
吉澤くんが見えてくる。後は渡すだけだ。

そう思った矢先、わたしは視界がグラッとする。あれ…?

気付いたら地面に倒れていた。どうやら転んでしまったらしい。

わたし、最悪だ。


「いっ…」

派手に転んだため膝が痛い。
恥ずかしいし何よりチャンスを消してしまった。
最悪だ。早く立たないと、早く…


「麻里!」


大きな声で呼ばれ顔を上げると吉澤くんが目の前まできていた。

「大丈夫。まかせて」

にこっと笑う吉澤くん。そう言ってわたしのバトンを引き抜くと真剣な表情で走って行った。


「麻里大丈夫??」


わたしの肩を担ぐサキ。他のクラスの子も心配してくれている。


「「わあーーー!」」


聞こえる歓声。リレーは終わったようだ。




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