恋を、した。
Chapter 1
雨の日に
こんな日に限って遅くなってしまった。
さっきまでの明るい空は、東の方から暗くなりどんよりとした雨雲に支配されていく。
「急速に発達した低気圧の影響で、関東地方は夕方から夜にかけて雷を伴った強い雨が予想されます。落雷や竜巻など激しい突風にも注意してください」
朝の天気予報でも繰り返し警戒を呼びかけていたというのに。
上空を浮遊する雲の流れは速く、風に漂うは雨の匂い。
直ぐにでも降り出しそうな厚い雲に覆われた空の下、私は傘がないことに今更気付いたところ……。
「夕方から雨だって」
学校へ行こうと玄関の扉を開けた私に、佳奈子さんが声をかける。
「傘、忘れないでね」
振り返りもせず
「……折りたたみ、持ってるし」
小さな声で答えた、私。