恋を、した。
石垣の下には大きな仁王様が道行く人に睨みを効かせていて、階段を上ると石の鳥居が見えてくる。

その奥には市指定の天然記念物、樹齢400年を超える大楠の大木が境内にまで枝葉を伸ばし、風に大きく揺れていた。


八幡さま、雨、まだ振りませんように。


ちらりと仁王様を一瞥し、急に雲の動きが速くなった空を見上げた。


なんか、やばくない……??


しっとりと湿った空気が舐めるように頬を滑っていく。


「……っ」


……は、早く帰んなきゃ。


ざわざわとした妙な胸騒ぎに急き立てられるかのように、私は足を速めて帰路を急いだ。


―――――!!


ひゅうーっと、生暖かい風が吹き荒れた。

ばさりと靡いた髪が目の前の視界を覆い、思わず足を止める。


「えっ」


あっという間に空は暗くなり、スカートが風を孕んで翻された。
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