恋を、した。
夏も近いというのに吐き出す息が白い。

屋根のある場所で雨を凌ごうと思ったのに身体ごと持って行かれそうで、足元がよろよろとおぼつかない。


ここじゃ駄目だ。


山門を吹き抜けていく風が強すぎるのだ。


……拝殿まで行けば、後ろから吹き荒れる風に押されることはないのかもしれない。


「……っ」


横殴りの雨は容赦なく地面を叩き私に向かって跳ね返ってくる。


この雨の中を走って拝殿まで行く??

……ああ、また濡れるよっ。

でも、ここにいたって逃げ場がないよね??


「よしっ」


気持ちを奮い立たせるかのように声を発しながら、私は辺りを見回した。


三秒かかるか、かからないか……かな。

だったら、――― うんっ、行こう!!


いち、にの、さんっ!!


斜めに掛けていたスクールバッグを頭に掲げると、雨の中、一気に拝殿に向かって駆け出した。

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