俺様上司に、跪いて愛を乞え
ーー車は、いつしか海岸沿いの道を走っていた。

あけられた窓から吹き込む潮風に、いつもみたいにセットのされていない髪が、かすかになびくのを、

時折思い出したように、ハンドルを握ったままで片手で掻き上げる。

その仕草から、目が離せなくなる。

胸がどうにも早く打って、どうしようもなくて、他のことを考えようとする。

そこに、いきなり、「どこか、行きたいところはできたのか?」と、聞かれて、

「えっと…あの…」と、あわててあたりを見回す。

その視界の中に、水族館が飛び込んで、思わず「水族館…行きたいです」と、口にした。
   
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