俺様上司に、跪いて愛を乞え
ーーと、ふいに、部長が目をあけた。

いつもは綺麗にまとめられている髪が、うっすらと汗ばんだ額に寝乱れてばらけている。

起き上がり様に、その髪を片手でつかみ上げる。

「部長……」

ほんの少しでも、そばに寄ることくらいできたらいいのにとも思うのに、私にはなんの行動さえも起こせなかった。

ただつっ立っている私に、

「シャワーを貸してもらいたいんだが、いいか?」

と、部長が訊ねてきた。

うなづいて、「あっちです」と指差すと、部長は「悪いな」とだけ言って、バスルームへ向かった。
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