ピアスの秘密
領は仕事帰りに、オープンが待ちきれずに時々遠藤より早く店へ入ることがあった。

もうこれで、誰の目も気にせず会える…

領の携帯が鳴った。

「はいっ」

「ちひろです。今、新幹線を降りたけど、どうしたらいい?」

「うん、駅のすぐ近くで知ってる場所ある?」

「えー!?あっそうだ、はとバス乗り場ならわかる」

「じゃあ、その辺りで待ってるよ。僕はタクシーに乗ってるから」

「うん、わかった」

運転手に伝えながら、領は笑みがこぼれた。

ちひろさんはいつもひかえめで穏やかなのに、なかなか大胆なことをするんだなぁと胸が弾んだ。

左側の歩道に車を着けた、バックミラーに一生懸命走るちひろを見つけ、ドアをあけ、手招きした。

本当は目立ってもいいから大声で呼びたかった。

ドアをあけ領の左側に座りながらちひろは言った。

「ごめんね、急に来て」

領はは左手でちひろの右手をつかんだ。

「いいよ、ありがとう」

そしてあの夏の京都のように、手のひらを合わせしっかり、外れないように握りあった…

もうくっついて、お互いの血が通いあいそうな感じだった。

10分もたたないうちにバーへ着いた。


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