腹黒エリートが甘くてズルいんです
改めてそんな思いを脳内で呟いてみることで、勢いがつく。

今なら言えるかもしれない。


「あのね……あたし達の友情って、強固よね?」


あたしの決死の覚悟の台詞を聞いて、由依が声をたてて笑う。


「アハハハ、だから、言ったじゃん! 不倫なんて誉められたモノじゃないけど、あたしはいつでも莉緒の味方だって。あたしはそんなことで幻滅したりしないし、応援するよ」


「あ、違うの違うの」


慌てて訂正するあたしの顔を由依が不思議そうに見つめてくる。


「あのね、もしもあたしが会社を辞めても……こうやって一緒に飲みに行ったり、旅行に行ったりしてくれる?」


ぽかーん。

自分の親友(しかも美人)にそんな表現を当てはめるのは失礼かもしれないけど、結構なアホ面で、ぽかんと口を開けてあたしを見ている由依。
由依の回りだけ時間が止まったようにしんとしている。

「え、なに、もう奥さんに訴えられたの? 海外逃亡とか? あー、どうせ行くなら南の海の方にして、休暇とって会いに行くから」


今度はあたしがポカンとする番だ。何その短絡的な話。
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