腹黒エリートが甘くてズルいんです
「え、凄いじゃん。環境を変えるのって年々億劫になるじゃない? あれもしたい、これもしたいって思うけど、段々まぁいっか、って妥協するっていうか……現状維持の方向で、みたいな?」


そんなに酔っていないはずだから、この由依の興奮は本物なのだと思う。


「そう、そうなんだよ。あたしも、今の会社が嫌なわけじゃないんだ、だから、辞めてやるーっ! って感じでもないし」


分かる分かる、と頷き合いながらまるで新入社員のように、未来への希望や夢を語り出すあたし達。
たまにはこんな語り合いも悪くないかも。


でも、あたしは結構本気で。
この間、実際に保育園に行った時の気分の高まりを何と伝えればいいのか、ちゃんと伝わっているのか分からない。

環境を変えたい訳じゃなくて、あたし自身を変えたい。
やりがいのある仕事に向き合っていれば、35歳までに幸せに、だなんて変にこだわる必要もきっとなくなる。

……そんな風に言うと、結婚出来ない現実から逃げているように思えるけど、それもまた違う。うまく言えないけど。
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