腹黒エリートが甘くてズルいんです
「それじゃあ、新しい道を開拓してくれた出光先輩に感謝だねー」


由依の三杯目のアルコールは出光先輩への感謝として捧げるらしく、ぎゅうぎゅうとグレープフルーツを搾ってからジョッキを高く掲げた。


「まぁ……まだはっきりと決めたわけじゃないんだけど……」


何となく口ごもる。『寂しいー! 行かないで!』なんて、言われたかったわけじゃないけれど、由依が両手放して喜んでくれることがちょっぴり寂しいような、複雑な気持ち。


「出光先輩に相談してみれば?」


唐突な由依の言葉に面食らう。


「なにを?」


あたしの疑問を分かりやすく鼻でせせら笑う由依。


「決まってるじゃなーい、折角莉緒の新しい人生のきっかけになるかもしれない出来事を与えてくれた人よ? とりあえず意見聞いてみようよ!」


何だか壮大な話になっている、と思っているうちに、由依が早速先輩に電話をかけ、呼び出しているらしい。


どうやら繋がったらしく、何だかんだと話してから、電話を切ってあたしにアイドルのようにかわいく微笑む由依。
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