腹黒エリートが甘くてズルいんです
***


「おーまーたーせっ!!」

出光先輩がほろ酔いで陽気にお店にやってきたのは、さっきのお誘い電話から一時間もたった頃。


「どーもー! お疲れ様です! わざわざすみません、生中でいいですか?」

さすが由依。サッとメニュー表を拡げつつ、おしぼりを手渡しつつ、労いつつの注文確認。美人なのに気配りも出来るって凄くない?

あたしは、自分のそういう能力の低さに改めてがっかりとする。


「おー、サンキュー」


先輩も、美人の後輩から受け取ったというのにおしぼりでごしごし顔を拭いちゃう由緒正しい中年の立ち居振舞い。


あたしがそんな二人を傍観していると、先輩がテーブルに出ていた枝豆を口に放りつつ、「で?」と聞いてくる。


で、ってなによ……と思いながら先輩の顔を見返すと、由依にアイコンタクトを送られる。
あ、そうか。あの話か。

さっきの由依の策士ぶりに圧倒されて、本来の目的を見失っていた。

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