腹黒エリートが甘くてズルいんです
うん、決めた。
あたし、異動願いを出そう。そして、来年の4月から営業職で頑張ってみよう。

前の月の3月には35歳になってしまうけれど、次の月から新しい部署で頑張ると決めたのだから、一ヶ月の誤差くらいなんでもない。


結婚だけが人生じゃない。
いや、結婚を諦めたとかじゃなくて。
いい人が現れたらそりゃあいずれ考えるかもしれないけど、とりあえず今は、仕事に打ち込む。
『幸せになる』イコール結婚でしかないなんて、ちょっと単純過ぎたかも。


よし、残りの日々はしっかり総務課の仕事をこなして、来年度からは心機一転、営業をやってみよう。


妙に前向きな気持ちで個室を飛び出すと、またまたスマホが激しく揺れる。


『何その急展開。とりあえずおめでとう』


あれ。祝ってくれてる?
そうか、そうだよね。あたしも、あんなことにこだわってないで、きちんと報告すべき?

新しい道を見つけたかもしれない、ということを。
決めたのはたった今だけど、しかも先輩が思い付いたのを頂く形ではあるけれど。


でも、今更何て言えばいいのか分からなくて、何も返さずに勢いよく歩き出した。
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