腹黒エリートが甘くてズルいんです
「行った……けど?」


「あの、頭ハゲちゃってる新郎が、鈴木補佐。結婚式の後、本社に出張で来て、ノリノリで写メを見せてくれてさーー新婚さん特有のハイテンションで大変」


まさか。脳裏に、あの昭和のスナックのような画像が鮮やかに浮かぶ。


「で、どこのスナックのママかと思ったら、中学卒業以来に見る仲田で。懐かしいような、知らない人のようなその画像を見てたら、思い付いてさ」


スナックのママ。
あれですね、例の二次会の。あれは仕方ない、言い訳のしようがない。完全にスナックのママです、えぇ。


「……思い付いた、って何を?」


聞きたくない。

聞いちゃいけない、聞かない方がいいって、あたし中の警戒警報が鳴り響く。



「暇潰しの、ゲーム」



がごん、と後頭部を殴られたような気がした。
と、同時に『なるほど』と納得している自分もいた。
詳細を聞く前から、何となく分かってしまった気がした。

さっきから、ここで話してくれているのは本当にあたしの知っている酒井君なんだろうか。
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