腹黒エリートが甘くてズルいんです
「社会人って、疲れない? 俺は、疲れる」


どさ、と柔らかそうな運転席のシートに勢いよくもたれながら言う。


「そりゃ、まあ、ね……あたし達も、もう若くないもんね」


「そうそ、色々責任とかも増えてくるだろ? 俺、何か知らないけど期待されてるっぽいんだよ、望んでもいないのに」


投げやりな口調で酒井君が言う。


「仕事仕事仕事でさー、息抜くのだって、会社の飲み会とかだけじゃあなー。それでもまあ、ほら、社外にイデミッツーみたいに気の合う飲み友達とかも出来て、それなりに楽しくやるんだけど、虚しくなるときとかあってさ」


……あれ?
ふと、思い付く。


「酒井君、彼女は? 結婚が嘘だとしても、恋人くらいいるんでしょう?」


あたしの言葉に、酒井君が何故かふふふ、と楽しそうに笑う。
いや、別にあたし面白いこと言ってませんけどね。


「仲田、そんなこと気にするんだ? 俺が既婚者のふりしてても、なんの興味も持たなかったくせに」
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