腹黒エリートが甘くてズルいんです
いや、それは酒井君が詳細を聞いちゃダメだと言ったからであって……素直なあたしはそれを守っただけ。


黙りこむあたしを精一杯視界に入れないようにするかのように、窓の外を見ながら、酒井君が言う。

「こうして本人を前に言うのは鬼だなーと思うんだけどさ。仲田、丁度いいんだよね。妙齢すらも越えたようなオンナがさ、恋人もいないのに結婚したいとかいって。焦ってるのに焦ってないですってふりをするプライドだけはあるし、みたいな。からかうの、面白いじゃん。あ、勿論、俺が飲み会とか設定して誰かとくっつけばそれはそれで面白いけどね」


……面白い?
34歳にもなって、結婚出来なくて焦っている旧友の惨めな姿が面白かったってこと? いい暇潰しになったってこと?


じわり、と涙が滲んでくるのが分かる。

酷くない? なにそれ。


「鬼ついでに言うと」


もうこれ以上何も聞きたくない。十分だから、もういいから。
特に何の取り柄もなくて、こんな歳までいき遅れても尚、結婚したいなんて寝ぼけたことを言ってすみませんでした。
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