腹黒エリートが甘くてズルいんです
「仲田が、メッセージ送ってきただろ? もう自力で幸せを掴んだなら、俺のしょうもないゲームもここで終わりにしなきゃと思って」


そうか。
それを、あたしにわざわざ伝えに?
物凄く失礼なことをしておきながら、その妙に礼儀正しい気遣いは何なの……。

ふと、思い立ち、聞いてみる。


「どうなればゲームセットだったの?」


酒井君がニヤリと笑う。


「やっぱ、あれだろ。中学の頃、清純でキラキラして、汚れを知らなかったような仲田が、倫理観だの一般常識だの理性だの吹っ飛ばして『奥さんを捨ててあたしと逃げて!』とか言ってきたら、じゃない?」


……なんだそれ。


「言うわけないじゃん」


『だよなー』とかなんとか言いながら笑う酒井君の中で、中学生の頃のあたしが『清純でキラキラして』なんて形容されたことに驚く。
ただの口からでまかせだとしても、ちょっと嬉しいなんてこの期に及んで思うあたしは、どうかしているのかもしれない。
< 137 / 227 >

この作品をシェア

pagetop