腹黒エリートが甘くてズルいんです
とぼとぼと一人、道を歩く。


普通にランチをするはずだったのに。混んでるねーとか言い合いつつ。
そして、先週出光先輩と飲み、その場で決まったあたしの新しい未来……というか、今後について報告したかったのに。


酒井君は、既婚者ではない。
その事実が発覚したのに、おまけで付いてきた事実の方が重すぎて。


そして、再会した時に例え酒井君があたしにゲームをしかけなかったとしても、結果は同じだった。

『好きになってはいけない相手』という点で。


好きになる前でよかった。
寧ろ、『既婚者なんだから』と歯止めをきかせておいてよかった。



『よかった』と言っておきながら、涙がどんどん溢れてくる。

これは、何の涙なんだろう?

好きになる前にあんな人だと分かってよかった、という安堵?

あんな人だと思わなかった、という憤り?

バカにしないで、という怒り?


……どれも、しっくりこない。
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