腹黒エリートが甘くてズルいんです
強いて言うならば、『あの酒井君があたしにそんなことをするはずがない』という感じ?

自分で改めて言葉にすると、アイドルに滅茶苦茶貢いじゃう人とか、悪徳商法にひっかかっちゃう人と同類のようにとられても仕方ないとは思う。


でも、違う。
うまく言えない自分がもどかしいけれど……。


何か、事情がある気がしてしまう。
確かに、20年近くという恐ろしい歳月を挟んでの再会なのだから、その間に人格的にも変化があったとしても不思議ではないのかもしれない。
でも、それでも。
あたしには、酒井君がそんなことをする人にはどうしても思えない。
わざわざ手の込んだ方法であたしを理由もなく騙すとか。

……なーんて。
実際騙されたあたしがこんな風にアツくなっても、これって、酒井くんを擁護しているふりをして実は自分の身を守っているのかもしれない。
自分が、惨めにならないように。
酒井君にとって、どうでもいい存在であると認めなくてすむように。

……好きと自覚すらする前にメタメタにフラれたという辛い現実を、見なくてすむように。
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