腹黒エリートが甘くてズルいんです
『あたしが酒井くんに弄ばれているのを必死で隠そうとしてくれてありがとうございます』と。

なんか、それも違う気がするけどね。
でも、酒井くんの話を聞く限り、あの焦りはあたしが真実を知って傷つくことを恐れてのもののはず。
『そんなに悪い話じゃないから安心しろ』みたいなその場しのぎの嘘はこの際許すとして。


酒井くんは、今どうしているのか。
ついでにちょっと聞いてみたい気もしていた。


あの日からまだ１ヶ月なのに、一切連絡を取らないと一体どうしているのか気になってしまって。

あたし自身が連絡を取りにくいとなると、あとは出光先輩に聞くのが手っ取り早い気がして。


だから、出来たらこの飲み会の前に聞きたかったのに。


「……遅れてわりーわりー」


慌てた様子で先輩が飛び込んでくる。


「お、イデミッツー、お疲れ」

あたしの前にいた菅生さんが爽やかに声をかける。
この人はあたしだけにじゃなく、みんなに平等なんだな、と、当たり前のことを頭の片隅で考える。

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