腹黒エリートが甘くてズルいんです
「いやー、ちょっと得意先と長引いちゃって……あ、もしかしたらもう一人、あとから来るかも」


ネクタイを緩めながら椅子に座る。
うわぁ。意識したことは無かったけど、やっぱり営業って大変そう……そりゃそうか……。

だからといって今更営業への転向をやめるつもりなどないので、気を取り直してメニューボードを見る。

けれど、もうさっと菅生さんが先輩に見せながら話している。


「ここら辺は頼んだからもうすぐ来るよ、好きだよねー、ナンコツ系」


……このイケメン、そんじょそこらの女子よりよっぽど気が利くのでは?
あたしなんて、仕事で遅れてきた先輩を差し置いて、自分のためにメニューを見ようとしてましたけどね……。


ふと。
気がつけば、場は男性三人の、女性二人。
あ、もう一人来るのって、女の子か。楽しい子だといいな。


「……にしても、あんまり営業が大変なんて言うとかわいい莉緒ちゃんが来てくれなくなるから、やめとけよイデミッツー。これから営業希望なんて、貴重な人材だぞ?」


由依ともう一人の中々のイケメン(名前を忘れるというこのやる気のなさ……)が何やら話しているせいか、何となくあたしと先輩と菅生さんで、話すような雰囲気。
< 160 / 227 >

この作品をシェア

pagetop