腹黒エリートが甘くてズルいんです
「菅生さんと今日一緒に帰るから」


あたしの宣言に酒井くんが反応する。


「お前、頭おかしいの? んなことしてみろ、帰る前にヤられるぞ?」

怒っているような強い口調に少し怯むあたし。
でも、負けない。


「……っていうシナリオでしょ? 菅生さんは別に本当にあたしを狙っている訳じゃないもん。そこでネタばらしになるでしょ。もう騙されないし」


「……なんだよそれ」


「酒井くんが認めないなら、菅生さんから聞き出すって言ってるの。だから、あなたのお望み通り、これから菅生さんと帰る」


こんなの、まるっきり喧嘩だ。
こんなに、他人に対して怒りを覚えたのはいつぶりだろう。
もう、とっとと離れたい。

身体をパッと返して、さっきのお店に戻るべく走り出そうとしたとき、

「……っ」


右の手首に強い痛みを感じに、動きを止める。


「……離して」


あたしの手首は、酒井くんにがっちりと捕まれていて。
その、細身の身体は意外と筋肉質だったんだ、なんてことを思わず思い出す。
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