腹黒エリートが甘くてズルいんです
「離さない」


真剣な酒井くんのトーンに、今までの怒りとは別のところで不覚にもきゅんとなるどうしようもないあたし。

でも。すぐにその気持ちも怒りに変わる。

こんなに、好きな人なのに、その人はまたあたしを騙そうとしている。
どうしてそんなことをするんだろう。


「……どうして?」


どうして、ここまでして『ゲーム』をするの?

どうして、ばれているのにそんなことをするの?

これ以上、がっかりさせないで。


ぐ、っと、力を入れても全然動かない。怖いくらいに、がっちりとホールドされている。


「どうして、って……。あれだよ。お前、折角4月から新生活だとか言ってんのに、そんなふらふらしてていいのかよ……俺はあいつに、何も言ってない。何も頼んでない。だから、仲田を狙ってるっていうのは、あいつの本心だよ。だからヤバイって言ってんの!」


なにそれ。
意味が分からない。
さっきから、あたしの4月からの新生活を絡めてくる辺りも、意味不明だし。
完全に無関係だし。
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