腹黒エリートが甘くてズルいんです
そんなこんなを踏まえての、このタクシー待ちの時間。
改めて、二人っきりだというこの状況に少し怯む。

……あ、そうか。何もタクシーに乗らなくていいじゃない。

皆とは解散したんだし、ここで聞いちゃえばいいんだ!
で、とっととあたし達も解散。天才。あたし、天才だ。


「あの……」


恐る恐る、その背中に声を掛ける。
緩く、ウェーブのかかったその髪型は、当然だけど『知らない人だなあ』という気持ちになる。
ゆっくりと振り返った顔をまじまじと見る。
確かに、皆と楽しく飲みながらも、気遣い気配りのしっかりできるイケメンという逸材だけど……こんな顔だったっけ? と思う。


「ん? お水でも買ってこようか? 莉緒ちゃん、そんなにお酒強くなさそうだもんね」


優しく微笑むその顔は、確かに外灯の中で見てもしっかりとイケメンで。
だけど、

″違う″

と、いう言葉が思わず脳裏に浮かび、ブルブルと首を横に振る。
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