腹黒エリートが甘くてズルいんです
あたしは、誰と比べてるんだっつーの。


違って当たり前。イケメンとひとくくりにしても、顔の造作が違うのは勿論だし、雰囲気だって違う。
一人一人、違うんだから。

……ついさっきまで、話していたからだ。
っていうか、人と喧嘩なんて殆どしたことがないのに、あんな風にかっとなって興奮したからだ。
そもそも、喧嘩になるようなことをしてくるからだ。
いつもと違って、無表情だとか、傷ついたような切ない表情を見ちゃったからだ。


……だから、だから。



だから、酒井くんの顔がちらつくんだ。


「ははは、お水いらないか。タクシーちょっと道が混んでるみたいで、遅れちゃうみたい。ごめんね」

優しい話し方。
そう、菅生さんはきっといい人だよね。あたしの営業への転職も、尊敬するなんて言ってくれたし。

こんな、人のいいイケメンまで巻き込んであたしを騙して何が面白いんだろう。

もう、とっとと話してこの人を解放してあげなくてはいけない。
ごめんなさい、菅生さん。
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