腹黒エリートが甘くてズルいんです
幸せになりたい
*****


なんだっけ、この匂い。
あ、このシーツ凄いさらさら。そーかー、この間晴れたから大物まとめて洗濯出来たもんねー…… って。



あれ?
ふと、纏う香りに違和感を覚えて目を開ける。

何あの古めかしい時計みたいなやつ……見たことない。あれ。あれ?!


がば、と身体を起こし、全身の激痛に思わず声が漏れる。


「……っつう」

頭、背中、お尻と手足。
頭以外は打ち身のような痛さ。特にお尻。大きな声では言えないけれど、これ、あたしの尾てい骨は無事なのでしょうか。


いや、て言うかその痛みもどうかと思うけど、ここって……。


ホテルの、一室。
色気も素っ気もないビジネスホテルっぽい。
清潔感のある、簡素な造り。


昨日の夜のことが怒濤のように思い出され、一瞬身体中の痛みを忘れる。


とりあえず、菅生さんにラブホに連れ込まれなかったことに、心底安堵する。


由依にも説明しないとな。
て言うか、酒井く……あれ?


そんなに広くもない部屋の中をざっくり見渡せば、あたしの寝ているベッドの他には、テレビの乗った棚、すぐにお湯のわく小さなポット、一組の椅子とテーブルしかない。
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