腹黒エリートが甘くてズルいんです
「俺はね、お前が好きなの」


整理も何も、唐突に飛び出してきたまさかの台詞に、言葉も出ない。


「中学の頃、好きだって言いたくても言えなかった相手を、二十年経って偶然知り合いのスマホの画像の中に見つけた。運命だと思った。それで、俺は思い付いたんだ」


画像……ってまさかあの二次会の昭和のホステス画像? それを、サユミの旦那様に見せられたって言っていたもんね。


「そいつに、彼氏がいないことも、結婚してないことも突き止めて、どうすれば自然にそいつに接近して、尚且つ距離を縮められるかなって、俺なりに考えたの」


酒井くんが部屋の中をうろうろしている。
簡素なビジネスホテルの部屋の壁、という背景のせいか、酒井くんの絵になる立ち姿が余計に際立って見える。

話す内容が随分前にまで遡っていることで、まだ暫く酒井くんと一緒に居られそうなことに喜びを感じている自分に驚く。


集中して聞かなくちゃいけないのに、気恥ずかしさもあって中々難しい。


だって、『そいつ』ってあたしのこと、なんでしょう?
ドキドキしちゃうよ、そりゃ。


「で、思い付いたのが……この間白状したやつ」

酒井くんが少し気まずそうにあたしを見る。
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