腹黒エリートが甘くてズルいんです
「暇潰し、っていうのは後から思い付いた嘘。本当は既婚者だから結婚したいならアドバイスするぜー、なんて誘いだして一緒に飲みに行って、タイミングを見計らって独身であることを暴露して俺達は付き合ってめでたしめでたし、にしたかったの」


暇潰しのゲームっていうのが、嘘ってこと? なんのために?
あたし、その言葉に物凄く打ちのめされたんですけど。


「イデミッツーは、知ってるんだ。俺が仲田と再会して、うまくいったら告白したいってこと。だから、口裏合わせてくれた、飲み会の設定とかも全部」


……確かに、由依と先輩と三人で飲んでいて、初めて酒井くんと先輩が繋がりがあると分かったとき、『悪い話じゃない』みたいに言っていた気もする。その場しのぎの嘘だと思っていたけど……。


ふと、疑問がわく。


「なんでわざわざ既婚者設定にしたの? だから話がややこしくなるんじゃない? 普通の再会だったとしても、あたし達、遊ぼー、飲みに行こーってことになったでしょ、きっと」


再会した酒井くんの左手に指輪が光っていた時の何とも言えないざらりとした気持ちを思い出す。
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