腹黒エリートが甘くてズルいんです
ああ、この人に選ばれるということはこの先、絶対にあり得ないんだ、という寂しさというか、別世界の人である証と言うか。
「んーーー、鎧みたいなもんか? 免罪符っていうか。仲田に相手にされなかったとしても、既婚者って思われてるんだから当然だよなっていう、不可抗力の言い訳が欲しいというか」
なにそれ。ちょっとよく分からない。
……そんなあたしの戸惑いは思いっきり顔に出ていたみたいで、酒井くんが笑う。
「そんな怖い顔するなって。男子はナイーブなの! そういうしょうもない言い訳を自分自身に用意しておかないと、怖くて動けないの!」
……これがあの、モテモテでみんなのアイドルだった男の言う台詞なんだろうか。イマイチな男子ならともかく、酒井くんレベルでそんな心配をするなんて。
「俺のシナリオ、完璧だと思ったのにな。再会する、既婚者のふりをして距離を縮める、仲良くなったら本性をばらす、なーんだじゃあ付き合えるね! と付き合う、プロポーズする、お前が35歳になるときに、結婚。幸せにしてやるって言っただろ? あれは……あの部分は本気だったんだ」
苦しそうにも見える表情で酒井くんが言う。こんなに格好いいのに、あんなに皆にキャーキャー言われていたのに。
「んーーー、鎧みたいなもんか? 免罪符っていうか。仲田に相手にされなかったとしても、既婚者って思われてるんだから当然だよなっていう、不可抗力の言い訳が欲しいというか」
なにそれ。ちょっとよく分からない。
……そんなあたしの戸惑いは思いっきり顔に出ていたみたいで、酒井くんが笑う。
「そんな怖い顔するなって。男子はナイーブなの! そういうしょうもない言い訳を自分自身に用意しておかないと、怖くて動けないの!」
……これがあの、モテモテでみんなのアイドルだった男の言う台詞なんだろうか。イマイチな男子ならともかく、酒井くんレベルでそんな心配をするなんて。
「俺のシナリオ、完璧だと思ったのにな。再会する、既婚者のふりをして距離を縮める、仲良くなったら本性をばらす、なーんだじゃあ付き合えるね! と付き合う、プロポーズする、お前が35歳になるときに、結婚。幸せにしてやるって言っただろ? あれは……あの部分は本気だったんだ」
苦しそうにも見える表情で酒井くんが言う。こんなに格好いいのに、あんなに皆にキャーキャー言われていたのに。