腹黒エリートが甘くてズルいんです
余りにもキモいことを言ってしまったな、と、反省しつつ、そっと酒井くんを盗み見る。


なんか、黙っちゃってるし。こいつ、キモい!って絶対ドン引きしてる。あぁもう、あたしって大事なところでいつもこう……って、あれ?

酒井くんの耳たぶが赤い。まさか、とそっと斜め前から見てみると、酒井くんの整った顔が全体的に赤くなっている。


「……どうしました?」


「いやお前……急にかわいいことぶっ込まないで、マジで!! そういうフェイントかけると、一生離さないとかそういう変態みたいなこと言うぞ、俺」


かわいいことって。
そんなことをイケメンのくせに言っちゃう酒井くんがかわいいよ。


「……よし、良いこと思い付いた! じゃあこうしよう」


しばらく歩いてから酒井くんが急に言う。


「なに?」


「こうしてー、こう。な? これだとじゃんけんできるだろ?」


酒井くんが、繋いだ手はそのままに、ぎゅっと力を入れてあたし達の身体が向き合うようにしてくる。
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