腹黒エリートが甘くてズルいんです
もしかして。
あのとき言っていた『たった一人』は比喩でもなんでもなくて。

仲田は、本当に誰かのことが好きだったんだ。


その、たった一人に好かれたいと言っていた。


それはイコール、俺が何人周りに侍らせようが無関係。
そこから慌てて席を立って群れから離れても、無意味。


なにをやってたんだ、俺は。


仲田には好きなやつがいる。


その、突きつけられた事実は、思いを二年以上も温めている情けない自分を苦しめる。


『たった一人に好かれたい』


そんなの俺だって同じなのに。


沢山の女の子を侍らせたいわけじゃない、たった一人の側にいたいのに。

たった一人を笑わせたくて、面白おかしい事を言って『意外と話しやすいんだね』と言われた日の感動は忘れない。

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