腹黒エリートが甘くてズルいんです
「……いないよ」


辛うじて聞こえるくらいの大きさで、仲田が言う。


「は?」


張った虚勢を解く方法なんて知らないから、俺は偉そうな態度のまま、聞き返す。



「好きな人なんて、いないよ」


それだけ言うと、こっちも見ずに駆け出していってしまった。


……さっきと話が違うじゃねーか。



追いかけようにも、さすがこの夏まで部活をやっていたテニス部のエース、影も形も見えなくなっていた。
と、言うか。俺だってサッカー部だったんだから本気を出せば追い付くことは分かっていた。

でも、俺の足は根っこが生えたように地面から動けなくなっていた。





それから、中学を卒業するまでの半年。


なんとなく気まずくて。
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