腹黒エリートが甘くてズルいんです
心残りと言えばその、描いた未来の方向性の違い位だけど、今の会社が死ぬほど嫌な訳でもないし、そもそも描いた未来予想図で言うのなら、あたしは29歳で結婚していたかった。

34歳の今なら、1人目の女の子が4歳で2人目の男の子が2歳になっているくらいのはずだった。

って、やめよう、こんな虚しい絵空事。


ぶるぶると頭を振って、今度こそ、と目を閉じる。

いっそのこと、昨日の事が、全部あたしの記憶から消えてしまえばいいのに。
惨めな自分を再確認しただけの作業だもん。
あとに残ったのは疲労感と、虚しさと。

一人ぼっちの34歳なんて、想像もしていなかったあの頃。
34歳ともなれば、普通に結婚して、お母さんになっていると思っていたあの頃。

そうか、そこからやり直さないといけないんだ。
サユミの結婚式に出るか出ないかが問題じゃなかったんだ。


今更どうにもならないことへの絶望と、今日はゆっくり寝ていられるという安堵から、あたしはやっと二度目の眠りに落ちていった。
< 23 / 227 >

この作品をシェア

pagetop