腹黒エリートが甘くてズルいんです
パソコンに向かっていると、不穏な空気を感じ、ばっと振り向く。


「……どうしたんですか、出光先輩」


そこには、とっくに自席、もしくは社外に営業に行ってしまったと思い込んでいた出光先輩の姿が。


「あー? いや、うん、ちょっと……」


「はい?」


明らかにおかしい。先輩は口ごもるようなタイプじゃない。
寧ろ、言いにくいことがあって言い淀む人の後頭部を躊躇なく平手打ちして豪快に笑っているような人のはず。


「ちょーっと、相談に乗って欲しいんだけど」


相談?
出光先輩が、あたしに??


あまりにもあり得ない台詞にポカンとすることしか出来ない。

「……はい、分かりました」


首をかしげつつ答えると、よし、と呟き、先輩が近くの上司に明るく声をかける。


「新商品の搬入の件で、仲田ちょっと倉庫にお借りしまーす」


「返さなくてもいーぞー」


ノリよく返された台詞に微妙に傷つきつつ、先輩に促される形で席をたつ。
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