腹黒エリートが甘くてズルいんです
「ねー、お前さー、週末地元に帰ったんだろ?」

……ああ、なるほど。切り口はそこから。そうですそうです、絵に描いたような田舎で、一昔前のステレオタイプな結婚式に参列し、34歳独身、めっちゃ形見の狭い思いをして参りました!
普段なら先輩からの告白なんて冗談として受け流してしまうところですが、今だからこそ、平凡な幸せに気づけたところです。
先輩、ナイスタイミング。ナイスジャッジ!


……なんて思いを口にする訳にはいかず、こくこくと無言で頷く。


「そんで、その……お相手は松永物産だったんだよな?」


誰から、とは聞くまでもない。由依の綺麗な顔が思い浮かぶ。第一、あたしは由依にしか話していない。


「そうですよ、松永物産はうちの地元にも支社があるんで」


「あー、そうか、支社だよな、そうか……」


あたしの言葉を聞いて、ぐるぐると会議室の中を難しい顔で歩き回る出光先輩。

て言うか、今から告白するっていうのに、ちょいと話が脱線しすぎていやしませんか?
テンパってしまう気持ちも、分からなくもないですけど。
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