腹黒エリートが甘くてズルいんです
あ、そうか。確かに一人で居酒屋の出口にいるのって、不自然……?


「あー、うん、飲み会抜けてきたとこ」


「なんで? もう帰るの?」


まさか、合コンまがいの飲み会で若い子ばかりの中、皆の気遣う空気に耐えられなくて抜けてきたとも言えず……。

なんて答えよう、と言い淀んでいると、酒井君が『ちょっと待ってて』と言い、急に誰かに電話をし始める。

その様子をぼんやり見ながら、あたしはこれは夢なんじゃないだろうか、と思った。


だって、目の前に酒井君がいるなんて。

夢なら夢でいいかもしれない。こんな良い夢を見られたなら、現実世界も頑張れそう。


酒井君は、中学校の同級生で。とにかく、モテモテだった。
顔が整っていて、文句のつけようがないイケメンで、その上頭も良いし話も面白いしスポーツも万能だし、優しいし、非の打ち所がなかった。男女問わず好かれていたし、先生にも一目置かれていた。

サッカー部に所属していて、まるでファンクラブのようなものもあったっけ。
< 47 / 227 >

この作品をシェア

pagetop