腹黒エリートが甘くてズルいんです
頭のレベルが違うから勿論高校は一緒ではなくて、中学校を卒業して以来、会っていないし、見かけた事すら無かった。
学校一の人気者だったので、噂では色々聞いたけど、本当にそれだけで。


あたしは学校で同じクラスになったことは無いけれど、塾が一緒だったので面識があり……というか、割とよく喋っていた。

いや、正直に言えば、好きだった。大好きだった。

想いを伝えることは出来なかったけれど、全身全霊で好きだった。

その当時の曲を聴けば思い出すほどに。
その当時のなにかの香りでふと思い出すほどに。


その人が今目の前にいるなんて、なんなの、これ。


「……、はいはい、んじゃ、そういうことで」


電話が終わり、酒井君が駆け寄ってくる。


「よし、んじゃ飲み直そうぜ」


「ん?」


やっぱり夢なのかもしれない。
正直、事態の急展開についていけない。
反応の鈍いあたしに嫌な顔一つせず、酒井君が爽やかに続ける。

「俺もどうせ気乗りしない飲み会だったんだ、ちょうどいいや」
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