腹黒エリートが甘くてズルいんです
別に、昔大好きだった人に再会したからって、何かを期待した訳じゃない。
でも、最初から既婚者だと分かっていたら、何て言うか……もう少し、ほんの少し、心構えというか、気持ちが違ったかもしれない。

少なくとも、今みたいにショックを受けることはなかった。

なんでだろ。
なんであたし、酒井君が結婚してたからってショックを受けているんだろう。
別に、独身だったとしても、あたしが結婚出来る可能性なんて微塵もないのに。

でも、０ではないかも。

とりあえず、既婚者であるという時点で、全てを諦めるというか、恋愛対象にはなり得ないわけで。


でもまぁ、そりゃそうか。
今年、３５歳だもんね。格好もちゃんとしたサラリーマンだし。頭も凄くよかったから、いいところに勤めているんだろうな。
結婚していない方がおかしいよね。
あのモテモテの酒井君だもん。
今思い返してみても、いつだって周りに女子を侍らせていた姿が思い浮かぶ。


「……け、結婚、してるんだねぇ」


指輪を見ながら、何とも無いように言ってみる。変に触れないのもおかしいし。
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