腹黒エリートが甘くてズルいんです
離婚したと思われてるというのも、何だか微妙だけど。


「何、お前、もしかして売れ残っちゃってんの?」


まさかタメの人からそんな時代錯誤、尚且つ男尊女卑感溢れるワードを聞くことになるとは思わなかった。
売れ残り、って……。


「そー。ま、売り出したこともないけど」


ちょっとふざけて肩をすくめ、酒井君の方を見ると、驚くほどの真顔。


「いや、本腰入れて売り出せよ。つーか、やばくない?」


う。グサッと来る。
そりゃ、あたしはあなたとは違うんで。昔からモテモテで、そんなことで悩んだことも無いんだろうけど……売りたくっても、セールスポイントが無いわけよ。なんて、言いたくても言えないけどさ。


「……しょーがないじゃん……」


力なく言い返す。


駅まで続く道。後五分もすれば、改札に着く。そんな場所で、良い歳した男女が立ち止まってごそごそと話している姿って、端から見てどうなんだろう。

中学生の頃の気持ちでいるわけではないけれど、酒井くんと話していると特に年相応に振る舞えていない自分に薄々気がついているあたし。
< 54 / 227 >

この作品をシェア

pagetop