腹黒エリートが甘くてズルいんです
そう。マツヤとはあたしの会社の通称。


「……そ、そうだけど?」


まさか、と思いながら返事をすると、うへぇえええええ、と驚き後ずさる酒井君。


「俺、松永物産、本社勤務」


「へ……」


まさか、の思惑がぴったり一致し、変な声が出る。


「今日は、受付嬢二人と、営業のやつと、四人でそっちと合流するはずだったの」


さっきの光景が目に浮かぶ。そうそう、それです! あたし、そのチームと飲んでました! みたいな。


「遅れてくるはずの人が酒井君だったってこと? いや、でも、若かったよ、出席者……あたしてっきり20代男子が来るんだと思って、もう、その前に帰りたくて……て言うか既婚者が来るとかどうなのよ、それ」


「なんだよー、それ。ただの飲み会って言ったのはそっちだろ? 既婚者は来るなよとか、やっぱり合コンだと思ってたんだな? だとしたらそのカッコはやっぱアウトだろーが」


しまった。
なんかものすごく失敗した気がする。これだから頭のいい人は……でも、乗り気じゃ無かったのは本当だし……。
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