腹黒エリートが甘くてズルいんです
あたしの言葉を受け、笑い飛ばしたりせず、しばし酒井君が考え込むような様子を見せる。


「……お前、誕生日、3月だっけ……?」


!!!
そ、そうです! 3月です!!

まさか酒井君が知ってくれていたと思わず、さっきの笑顔を見たときの何倍も胸がドキドキする。


「そ、そうだけ、ど……」


ああもう。完全に動揺が言葉に出ちゃってる。スマートにいきたいのに、あたしってば。


「だよなー、確かなんかそんな話を昔した気がする。俺の記憶力、すげえ!」


あたしのドキドキや動揺はお構いなしに楽しそうにしている酒井君。
その温度差というか、違いに何となく凹んでいるとガッと両肩に手を掛けられ、パンパンと叩かれる。


「よし、わかった。俺がお前を35歳で幸せにしてやる!」


……え?? 何言ってるの? は? プ、プロポーズ?! いやいやいや、アナタ結婚してるよね??


何も返せないあたしの目の前に、キラキラと輝く左手の指輪をぐいっと見せつけてくる。


「俺、そこに関しては先輩だから。お前が結婚出来るようなアドバイスをしてやる! つーか、男心をレクチャーしてやる!」
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