腹黒エリートが甘くてズルいんです
「うるせ、恥ずかしいだろ?」


……何そのカワイイ理由。
でもまぁ確かに、壮絶な不妊治療中かもしれないし、奥さんが芸能人っていう可能性もあるし、まぁ、プライベートなことを根掘り葉掘り聞かれたくないのは誰も同じかな?


「んじゃ、センセイに教えを乞うにあたり、1つだけ教えて?」


「……なんだよ」


何故かふて腐れたような顔をする酒井君。本当にプライベートを詮索されるのが嫌なんだろうな。


あたしは、酒井君の左手の薬指を差しながら、聞いた。


「……センセイは、今、幸せ?」


しん、と辺りが静まり返る。駅が近い割りに人通りが少なくて、でも、今まで何かしらの音が聞こえていたはずだけど、急に空気が静まったような気がした。うまく言えないけれど。


「何でそんなこと聞くんだよ」


怒ったように小さな声が返ってくる。あ、まずいかな?


「いや、ほら。例えば、ふくよかなエステティシャンに痩身サプリ勧められても胡散臭くて要らないでしょ、そういう感じ」
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