腹黒エリートが甘くてズルいんです
「あー、まーな。服はこの間よりはいいよな。そのテイストが男子受けするかっつーとまた別の話だけど」

酒井君が大してあたしの方も見ずに適当に答える。


……それにしても、『男子受け』だって。
ああ嫌だ。そんなことに重きを置く人生なんてまっぴらごめんだし。着たい服を着て、食べたい物を食べるし……って、そういう性格だから嫁にいき遅れているのかもしれないけれど。

「……じゃあ何さ」


ぐいっと、生中のジョッキを敢えて豪快にあおってから聞く。


「もうさ、そもそもジョッキを持ってグビグビいくのがどうよ? 知ってるけど、お前ががさつなのはよーく知ってるけど!」


はーーーーーーーーーー? ここ、ビアガーデンですけど?!


と、いう言葉を飲み込もうとしたけど我慢しきれず、思わず漏れる。


「……ジョッキを持たないビアガーデンって意味無くない?」


「ま、あ、なー……」


あたしの意見に同調するとも、聞き流したとも取れるような言い草に、思わずいらっとしてしまう。


「何、この、蒸し暑い空気の中、白湯でも飲めっての?!白湯ガーデンですかここは」
< 67 / 227 >

この作品をシェア

pagetop